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執筆者の写真吉田 裕美子

The Change Leaders:変化を牽引するリーダー達に聞く <br><br>第3回 TOCfEは "困ったとき" の処方箋

家庭内で使うには気長に・・—— 2013年2月のシンポジウムで、お嬢さんと一緒にTOCfEのツールを使った事例を発表して下さいましたが、家庭内でTOCfEを活用するコツや、気をつける点などはありますか? (参考:「5歳児のTOCfE」http://wp.me/p21kxA-gy) 濱野繭子さん(以降 濱野):TOCfEは、のび太が困った時にドラエモンがポケットから出してくれる道具みたいなものだと思っています。「困ったときの処方箋」とも言えますね。 TOCfEのシンポジウムや全体最適の行政マネジメントのセミナーなどで発表した際、「どうやって(家族との会話に)取り入れたのですか?という質問を何回か受けました。実は、私自身も1回失敗しているのですが、困っていない時に無理に使おうとすると失敗するように思います。私の場合は、ツールを覚えて、すぐに主人の悩みを解決してあげようと思ったのですが、それは全く上手く行かなくて、「うさん臭い」と思われてしまいました。新しい事を覚えると、使ってみたくなることってありますよね。でも、相手が助けて欲しいと思っていない時や興味のない時は、それはとても難しいことだと思います。また、新しいツールを覚えると、それに夢中になって、つい使うこと自体が目的化してしまうこともあるかもしれません。自然に使えそうなときがくるまで気長に待つ。それまでは無理に家庭にとりこもうとしない方が良いのではないかと思います。 —— 濱野さんの場合は、お嬢さんと濱野さんの会話によく活用されているようにお見受けしますが、お嬢さんに対しては、使ってみてどうでしたか? 濱野:はい。娘と一緒に書いてみることもありますが、私自身が娘との対話について考えを整理することに多く使っています。TOCfEは、元々は子供の教育のために開発されたと聞きました。それが本当によく分かります。子供との会話にすっぽりとはまる感じがするんです。 ツールを使わないと、あれこれ頭に浮かんだことや、自分の感情に任せて色々と言ってしまったり、気分で行動を選択してしまったりして、その結果、子供の気持ちを考えてあげる余裕が無くなってしまうことが多くあります。でも、TOCfEのツールを使って考えると、気分で行動や発言を選択するのではなく、方程式や型に当てはめるように、次に聞かなければならないのは、ここだな・・というのが分かるようになります。また、それが自然と子供の気持ちを思いやることにも繋がります。 例えば、先日、娘とお買い物に出た帰り、子供がバスで帰ろうと言いました。歩いて帰る事ができる範囲だったので、私は歩いて帰りたかったし、乗り物好きの娘がわがままを言っているだけだと思っていました。でも、その時、「バスに乗る」「バスに乗らない(歩いて帰る)」というクラウド(TOCfEのツールの1つで、対立を解消するツール)がふと浮かびました。娘が「バスに乗る」という手段を取りたい要望は何だろう?ここ、まだ埋まってないな・・と思ったんです。実際聞いてみると、娘は、単に乗り物に乗りたいというわがままを言ったのではなく、その日一緒に買った本が一刻も早く読みたいので、バスに乗って早くお家に帰りたいという要望があることが分かりました。私が、「じゃあ、早歩きして早くお家に帰ろう!」と提案してみると、娘はすんなり、「良いよ!」と言ってくれました。 子供が「○○したい」と発することは、毎日の様にあります。でも、たとえ同じ「○○したい」であっても、その裏にある子供の要望は、シチュエーションによって非常にさまざまだということが最近分かってきました。この要望(何のためにそれをしたいのか)を明確にすることが、お互いにとってとても大切なことだと思いますし、クラウドの考え方を知ってから、それがちゃんとできるようになってきたと感じています。 子育て関係の本は大好きで、よく読むのですが、読んだ後は記憶が薄れてしまい実践に結びかなかったんですよね。その点、TOCfEはツールの構図を頭の中で思い浮かべて、公式で計算をするような感覚で箱の中を埋めていくだけで、相手の気持ち(要望)を考えることができる。無理に「よし、今日から優しいママになろう!」と気合いを入れたり、一生懸命心がけたりしなくても良いので、自分にとってはこの方法が一番楽なのです。

お嬢さんもWin-Winとなる方法を考えてくれるようになってきた—— お嬢さんとの会話が変わってきたことで、お嬢さん側の変化を感じる事はありますか? 濱野:年齢的に成長が早い時期ですので(現在6歳)、これがTOCfEを活用した会話のせいなのか、単に娘が成長するタイミングだっただけなのか分かりませんが、最近、娘も双方がWin-Winとなるような考え方をするようになってきているように感じる事があります。少しだけ・・ですけどね。(笑) 例えば、公園で遊びたいけれど、ママは仕事がある・・というような時に、この時間だけ公園に行ってくれれば、後は、ママの横でパソコン遊びしているよ・・なんて言ってくれたり。 —— 6歳のお嬢さんがそんな事を言えるなんて、すごいですね!今後は、どのようにfEを活用して行きたいですか? 濱野:小学校に上がりますし、今後は勉強に取り入れて行きたいと思っています。今でも自分が初めて知った言葉の意味をブランチに書いたりするんですよ。例えば、「偶然」ってこういう意味・・とか。 —— お嬢さんが自分で書くんですか? 濱野:はい。ブランチっぽいもの・・ですけど、自分で書きます。 —— 今後が益々楽しみです。

今後は、もっと周りの大人にも伝えて行きたい—— ご自身の考えをまとめたり、お嬢さんの要望を引き出すことにfEを活用されてきた、とても興味深いお話しをお聞きしてきましたが、今後は、fEをどのように使って行きたいですか? 濱野:今後は、ママ友や友人など、興味を持っている身近な人達に伝えたいです。実際、もうすでに勉強し始めているママ友もいますし、お母さんたちが自然に使えるようになれば、子供を怒る回数もぐっと減ると思います。また、TOCfEのツールは、高い目標を実現することにも大変有効なので、これまで自分には無理だ・・とあきらめてきたことに対して、行動を起こし始める人も増えるのではないでしょうか? —— 「子供を怒る回数を減らしたい」。これは、全国のママたちが願っている事に違いないですね!(笑) 濱野:でも、実際にやっていることは、本当にたいした事じゃないんですよ。「凄い事をした」というのではなくて、本当にたわいもない事で、やってみれば、当たり前の事ばかりなんです。 —— 濱野さんの今の言葉を聞いて、ゴールドラット博士の言葉を思い出しました。“It is common sense, but not common practice” とビデオの中でもよくおっしゃっていましたよね。聞いてみると、あまりに当たり前なこと、常識的な事ばかり。みんな「なんだこんな事か」と思う。でも誰もやっていない。実際、できない人の方が圧倒的に多い。これは、濱野さんから見て、どんな障害があると思いますか? 濱野:TOCfEを普段の生活に取り入れたいのに、上手く行かない・・という人のケースで考えてみると、「TOCfEを取り入れる」ということだけを考えるとつまづきやすいかもしれないな・・と思います。 私自身も、TOCfEを学んで、「よし、子育てに使うぞ!」という勢いでやろうとしたら、上手く行かなかったと思っています。でも、困って困って、そういう時にツールを使ってみたので、上手く行ったのだと思います。 —— とても大切なことを教えて頂きました。ありがとうございます。

インタビューを終えて インタビューが終わると、濱野さんから「こんな話しで良いんですか?」と言われました。濱野さんのお話しは、本当に日常的な親子の会話が多く、何か大きな変化を巻き起こした・・というようなセンセーショナルな事例ではないかもしれません。でも、これこそが、TOCfEの真髄だと私自身は感じました。“It is common sense, but not common practice”(常識だけれども、実践されていない)。奇をてらった手法ではなく、やってみれば、当たり前の事。だけど、私たちはちっともできていない事。それをすぐに実践された濱野さんのお話しには、学ぶ事がたくさんありました。 ■今回お話しを伺った方のご紹介 濱野繭子 様 株式会社グローバルブルー 執行役員 Facebook:https://www.facebook.com/mayuko.hamano ■聞き手 吉田裕美子 NPO法人教育のためのTOC日本支部 理事 Facebook:https://www.facebook.com/yumiko.yoshida

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